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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.81
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2018  81
Journal Club
終末期がん患者における呼吸困難に対する送風の有効性についての無作為化比較試験
広島大学大学院医歯薬保健学研究科
老年看護・がん看護開発学
角甲 純

Kako J, Morita T, Yamaguchi T, Kobayashi M, Sekimoto A, Kinoshita H, Ogawa A, Zenda S, Uchitomi Y, Inoguchi H, Matsushima E. Fan Therapy Is Effective in Relieving Dyspnea in Patients With Terminally Ill Cancer: A Parallel-Arm, Randomized Controlled Trial. J Pain Symptom Manage. 2018 Oct;56(4):493-500.


【目的】
 終末期がん患者が体験する呼吸困難に対する送風支援(顔に扇風機などを利用して送風する支援)の有効性を検証することである。
【方法】
 国立がん研究センター東病院の緩和ケア病棟に入院した患者のうち、安静時呼吸困難NRSが3以上、経皮的動脈血酸素飽和度が90%以上、ECOG Performance Statusが3か4、年齢が20歳以上、直近の採血でのヘモグロビン濃度が6g/dL以下ではない、という基準を満たした40名の患者を対象に、並行群間無作為化比較試験を行った。介入群では、据置型扇風機を利用して、5分間、顔に向かって送風した。コントロール群では、介入群と同じ扇風機を利用して、5分間、下肢に向かって送風した。主要評価項目は、呼吸困難NRSの変化量とし、両群における送風実施前後の値を比較した。また、呼吸困難NRSが1以上低下した患者の割合(臨床的に意味のある差と定義)、2以上低下した患者の割合、10%以上低下した患者の割合、25%以上低下した患者の割合を比較した。
【結果】
 送風実施前における呼吸困難NRSの値は、両群で差はなかった(平均値, 5.3 vs. 5.1, P=0.665)。送風実施前後における呼吸困難NRSの変化量は、介入群では-1.35(95% CI, -1.86〜-0.84)、コントロール群では-0.10(95% CI, -0.53〜0.33)にて、両群で有意差が見られた(P<0.001)。また。呼吸困難NRSが1以上低下した患者の割合(80% vs. 25%, P=0.001)、2以上低下した患者の割合(35% vs. 5%, P=0.043)、10%以上低下した患者の割合(80% vs. 25%, P=0.001)では、介入群はコントロール群と比較して、有意に高い割合だった。呼吸困難NRSが25%以上低下した患者の割合では、両群に有意差はみられなかった(40% vs. 10%, P=0.065)。送風実施前後における有害事象の報告はなかった。
【結論】
 送風支援は、終末期がん患者の呼吸困難の緩和に効果的な支援である。安全性と利便性、安価であることを考慮すると、終末期がん患者の呼吸困難に対しては、非常に有益な支援であると考えられる。
【コメント】
 呼吸困難に対する送風支援は、1980年代頃に着目され(Am Rev Respir Dis 1987;136:58-61, J Appl Physiol 1988;64:371-376)、がん領域でもエビデンスが構築されつつある支援である(Asia Pac J Oncol Nurs 2017;4:162-167, Am J Hosp Palliat Care 2017;34:42-46)。本研究の強みは、適切なサンプルサイズ計算のもと、無作為化比較試験が完遂されたことにある。一方で、終末期がん患者という対象の特異性から、呼吸困難の原因まで詳細には調査されていない。呼吸困難の原因まで調査されていれば、より効果の期待できる集団について、探索できた可能性が指摘されている。

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