line
Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.81
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2018  81
Journal Club
治療アウトカムと医療コストにおよぼすオピオイド誘発便秘の影響
静岡県立静岡がんセンター 薬剤部
佐藤 淳也

Fine PG, Chen YW, Wittbrodt E, Datto C. Impact of opioid-induced constipation on healthcare resource utilization and costs for cancer pain patients receiving continuous opioid therapy. Support Care Cancer. 2018 Jul 29. doi: 10.1007/s00520-018-4366-z. [Epub ahead of print]


【目的】
 がん性疼痛に対してオピオイドを投与されている患者では、オピオイド誘発性便秘(OIC)が問題となる。本研究は、オピオイド開始後の患者における治療アウトカムと医療コストをOICの有無で後方視的に観察した。
【方法】
 データは、2006年〜2014年における米国の保険診療データを抽出した。オピオイド開始後1年間における治療アウトカム(OIC、疼痛およびすべての理由による治療の有無、治療期間)と医療コストをOICのある患者と背景をマッチさせたOICのない患者でそれぞれ1,369名ずつ比較した。
【結果】
 OICのある患者およびない患者における経口モルヒネ換算使用量(ベースライン)は、77.5mgおよび79.3mgであった。すべての理由による入院治療は、OICのある患者で有意に多かった(73%vs 52%, p<0.0001)。平均入院期間もOICのある患者で有意に長かった(15日vs 11日, p<0.0001)。OICのある患者がOICを理由に入院した頻度は、30%あり、その期間は10日間であった。さらに疼痛関連の入院頻度は、OICのある患者で有意に多かった(39% vs 23%, p<0.0001)。疼痛関連の入院期間は、OICの有無で差がなかった(12日vs 11日, p=0.1018)。オピオイド開始後1年間の医療コストの差は、OICのある患者で有意に高く、21,292(USドル)高価であった。同様に疼痛治療に使用した医療コストもOICのある患者で、有意に高かった(7,019ドル)。OICのある患者が、OIC関連の治療に使用したコストは、9,196ドルであった。使用したオピオイド種によるOICの有無に差はなかった。
【結論】
 OICは、オピオイドを使用するがん患者の医療コスト増加に大きく関連している。OICは、unmet needs(まだ満たされていない患者の潜在的な要求)であり、早期からOIC対策に注力すべきである。
【コメント】
 OICの有無が医療コストに関連した理由として、OICがあるとオピオイドを増量できず、疼痛コントロールが不良になる結果であったと考察している。実際、OICの有無は、全入院頻度のみならず疼痛関連の入院頻度を増加させている。オピオイドによる3大副作用(眠気、嘔気、便秘)の中でも、便秘のみは耐性化せず、投与中持続する副作用である。これまで、がん患者の便秘は、医療者にも「多めの水を飲んで下さい」という指導や、患者にも「食べる量が少ないから当然」などと軽視されてきたように思われる。がん患者の便秘の放置は、消化器症状のみならずQOL全体に影響することが報告されている(J Med Econ. 2013; 16: 1423-1433)。そして、予想外に医療コストを高騰させる可能性がある。最近、ナルデメジンなどOIC対策の選択肢も増えているが、その使用によるOICの軽減のみならず医療コストの低減も期待される。

Close