line
Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.81
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2018  81
Journal Club
がん患者の抑うつに対する多職種共同介入の生存への効果:
SMaRT Oncology-2・3試験の長期観察
名古屋大学大学院医学系研究科看護学専攻基礎・臨床看護学講座
佐藤 一樹

Mulick A, Walker J, Puntis S, Burke K, Symeonides S, Gourley C, Wanat M, Frost C, Sharpe M. Does depression treatment improve the survival of depressed patients with cancer? A long-term follow-up of participants in the SMaRT Oncology-2 and 3 trials. Lancet Psychiatry. 2018 Apr;5(4):321-326. doi: 10.1016/S2215-0366(18)30061-0. Epub 2018 Mar 12.


【目的】
 がん患者の大うつ病併存は予後悪化と関連するが、抑うつ治療により予後が改善するかはわかっていない。がん患者の抑うつに対する多職種共同介入の短期効果を明らかにした無作為化比較試験についてその後予後を追跡調査し、生存に対する介入効果を検証することを目的とした。
【方法】
 無作為化比較試験はスコットランドのがんセンターとその関連施設で行われた。SMaRT Oncology-2試験は「予後が1年程度見込まれるがん患者」、SMaRT Oncology-3試験は「予後が3カ月以上見込まれるが予後不良ながん患者(肺がん)」のうち、大うつ病エピソードを有する外来患者を対象とした。施設の層別に介入群と通常ケア群に1:1で無作為に割り付けた。通常ケア群では、うつ病スクリーニング結果をかかりつけ医と腫瘍医に情報提供し、患者に主治医へ相談するよう促した。介入群では、通常ケアに加えて、看護師・精神科医・主治医による多職種共同介入が提供された。がん看護師は、関係構築、うつ病とその治療の情報提供、問題解決療法、抑うつのモニタリングを行い、最初の16週間に10回のセッション、次の16週間に月1回のモニタリングと必要時セッションを行った。精神科医は薬物療法のスーパーバイズを行い、看護師とミーティングを毎週行った。
 追加調査として、全死因による死亡を2015年7月まで調べた。死亡のハザード比を各試験ごとにCOX回帰により算出し、メタ分析により2試験の結果を統合した。
【結果】
 SMaRT Oncology-2試験500名(2008年5月〜2009年3月)とSMaRT Oncology-3試験142名(2009年1月〜2011年9月)の合計642名を対象に、予後情報を中央値で5年間追跡調査した。がん患者の大うつ病に対する多職種共同介入の生存に関する介入効果は有意ではなかった(SMaRT Oncology-2試験:HR=1.02、p=0.93;SMaRT Oncology-3試験:HR=0.82、p=0.28;メタ分析:統合HR=0.92、p=0.51)。
【結論】
 がん患者のうつ病に対する多職種共同介入は抑うつやQOLを改善するが、予後延長効果はみられなかった。予後延長の効果は認められないとはいえ、抑うつの改善がQOLの観点から重要であることには変わりない。
【コメント】
 SMaRT Oncology-3研究(予後不良ながん患者の抑うつへの多職種共同介入の無作為化比較試験)は本ニューズレター66号で紹介した。今回の報告では抑うつに対する介入による有意な予後延長効果はみとめられなかったが、「予後が1年程度見込まれるがん患者」を対象とするSMaRT Oncology-2試験でのHR=1.02と比較して「予後不良ながん患者」を対象とするSMaRT Oncology-3試験ではHR=0.82であったことは注目に値する。サンプルサイズ不足のため治療効果が示されなかった可能性があり、予後不良ながん患者の抑うつ改善による予後延長効果についてはさらなる検証が必要であろう。緩和ケア介入による予後延長効果に関連する重要な臨床試験の報告であった。

Close