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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.81
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2018  81
理事就任挨拶
専門的な緩和ケアとは何かを明らかにしていくために
国立がん研究センター
加藤 雅志




 現在、日本緩和医療学会は、緩和ケアの学術団体として大きな転換期を迎えています。本学会が、わが国の緩和ケアを強く牽引する重要な役割を担ってきたことについて、誰も異論は唱えないでしょう。本学会はこの10年間、政府ががん対策を推し進めていく中で、緩和ケア研修会などで中心的に活躍してきました。当初は非現実的な目標を掲げていると言われた研修会でしたが、その修了者数は10万人を超え、わが国の緩和ケアの底上げに大いに貢献している活動となりました。これは、学会に所属する緩和ケア領域の専門家たちが力を合わせて、多大なる努力を重ねてきたことによる誇るべき結果です。しかし、学術団体として考えたとき、ここで留まっていてはいけないことも事実です。
 政府主導のがん対策において緩和ケアの施策が一段落つきつつある今こそ、改めて本学会が取り組むべきことを、学会員が主体となって考えるべき時です。もちろん、学術団体の活動の証の1つでもあります緩和ケア領域のガイドラインの作成や、専門家集団として専門医・認定制度の創設、専門的緩和ケアの質の向上を目指した緩和ケアチームのセルフチェックプログラムの開始なども素晴らしい取り組みです。しかし、他にも本学会にしかできないこともまだまだあります。わが国の志を持つ緩和ケア領域の専門家たちが集まる本学会だからこそ、高い目的意識を持って他の団体では取り組むことが困難な研究・事業にも取り組んでいくことができると信じております。
 その1つが、緩和ケアに関する症例登録システムです。症例登録については、内容、方法、個人情報の取り扱いなどの多くの超えなければならない課題があります。一朝一夕ではとてもできるものではありませんし、まずは研究的な取り組みから開始されるべきです。しかし、緩和ケア領域の専門性が問われつつある今、検討を開始すべき時期ではないかと思っております。緩和ケアと支持療法、がんと非がん、治療の初期段階と終末期、様々な場面で「専門的な緩和ケアとは何か」が問われています。これに対する学会としての答えを明示していくことができるよう尽力していきたいと考えております。

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