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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.79
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2018  79
Journal Club
呼吸困難に対する予防的フェンタニルバッカル剤の効果:
二重盲検ランダム化パイロット試験
静岡県立静岡がんセンター 薬剤部
佐藤 淳也

Hui D, Kilgore K, Frisbee-Hume S, Park M, Liu D, Balachandran DD, Bruera E. Effect of Prophylactic Fentanyl Buccal Tablet on Episodic Exertional Dyspnea: A Pilot Double-Blind Randomized Controlled Trial. J Pain Symptom Manage. 2017 Dec;54(6):798-805.

【目的】
 がん患者の呼吸困難に対するフェンタニルの有効性を調べるために、歩行運動により誘発された呼吸困難に対して、プラセボを用いたフェンタニルバッカル剤(FBT)の無作為化二重盲検試験を行った。
【方法】
 対象は、MDアンダーソンがんセンターにおいて、突発的な呼吸困難(Numerical rating scale(NRS);3-10)を有し、経口モルヒネ換算60-130mg/日を使用するがん患者とした。6分間歩行テスト(6MWTs)を2回行い、2回目のテスト30分前にFBT(経口モルヒネ換算60-65mgの場合;100µg、≧66mgの場合;200µg)またはプラセボを投与した。2回の6MWTsの間で呼吸困難、歩行距離、有害事象などを評価した。
【結果】
 試験に参加した22人の患者において、試験薬を使用しない1回目の6MWTs後の平均NRSは増加した(1.0→5.0;プラセボ群、0.9→4.6;FBT群)。しかし、プラセボまたはFBTを使用した2回目のテストにおけるNRS増加は、FBT群で有意な低下を認めた(プラゼボ群;-1.1;95%信頼区間-2.5〜0.2, FBT群;-2.4;95%信頼区間-3.5〜-1.3)。しかし、両群間のNRSの比較では、有意差を認めず(p=0.068)、平均歩行距離にも、有意差はなかった。全体的な患者の改善感は、プラセボ群11名では皆無であったのに対して、FBT群では9名中4名がよい印象を回答した(p=0.03)。副作用には、大きな差を認めなかった。
【結論】
 呼吸困難に対してFBTが予防効果をもつ可能性がある。しかし、より大規模な試験による再検証の必要がある。
【コメント】
 2016年にがん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドラインが改訂されたが、フェンタニルは、がん患者に対する2つの無作為化試験による無効性の結果から、使用しないことが弱く推奨されている。しかし、経口剤の使用に支障のある患者や重度の腎機能障害を有する患者のオピオイド選択としては、フェンタニル貼付剤やその即効性製剤が使用されることが多く、モルヒネなどへのスイッチングを躊躇することがある。最近、オープンラベルによるPhase2比較試験においても、モルヒネに比べFBTが客観的な呼吸困難の改善および患者の主観において好まれる結果も示されている(J Pain Symptom Manage, 2016;52:617-25.)。今後のエビデンスの蓄積により、呼吸困難に対するオピオイドの選択肢が増えることが期待される。

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