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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.79
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2018  79
Journal Club
早期緩和ケア介入によるQOL改善に
患者のコーピング方法の変化は寄与(媒介)するか
名古屋大学大学院医学系研究科
看護学専攻基礎・臨床看護学講座  佐藤 一樹

Greer JA, Jacobs JM, El-Jawahri A, Nipp RD, Gallagher ER, Pirl WF, Park ER, Muzikansky A, Jacobsen JC, Jackson VA, Temel JS. Role of Patient Coping Strategies in Understanding the Effects of Early Palliative Care on Quality of Life and Mood. J Clin Oncol. 2018 Jan 1;36(1):53-60.

【目的】
 進行がん患者対象の早期緩和ケア介入によりQOLや精神的アウトカムの改善が無作為化比較試験で示されたが、その機序はわかっていない。患者のコーピングの変化が介入効果に与えた影響を明らかにする。
【方法】
 進行期肺がん・消化器がん患者350名を対象とした早期緩和ケア介入の無作為化比較試験データの2次分析を行った。QOLはFACT-G、抑うつはPHQ-9、コーピングはBrief COPEにより研究開始時と24週後に評価した。コーピングの変化を媒介変数としたマルチレベル媒介モデルにより分析した。事前の高次因子分析によりBrief COPEを接近型と回避型の2因子に集約した。
【結果】
 QOLに関する分析では、回帰分析の結果、QOLと接近型コーピングはいずれも早期緩和ケアにより有意に改善したが、回避型コーピングに有意差はみられなかった。接近型コーピングと回避型コーピングを媒介変数としたマルチレベル媒介モデルでは、早期緩和ケアのQOLに対する介入効果は有意ではなかった。媒介効果は接近型コーピングの変化が有意で、回避型コーピングの変化は有意ではなかった。
 抑うつに対する分析では、回帰分析の結果、抑うつと接近型コーピングはいずれも早期緩和ケアにより有意に改善したが、回避型コーピングに有意差はみられなかった。接近型コーピングと回避型コーピングを媒介変数としたマルチレベル媒介モデルでは、早期緩和ケアの抑うつに対する介入効果は有意ではなかった。媒介効果は接近型コーピングの変化が有意で、回避型コーピングの変化は有意ではなかった。
【結論】
 早期緩和ケア介入を受けた進行期がん患者は接近型コーピングが高まり、QOLの改善や抑うつの減少につながったことが媒介分析により示された。重篤な疾患に効果的にコーピングできる能力を高めたことにより、緩和ケアはQOLや抑うつ改善につながった可能性がある。
【コメント】
 Temelらの第2期の早期緩和ケア介入試験では緩和ケア外来の診療内容が記録された。症状緩和75%、コーピング支援70%、ラポール形成44%、病状理解支援38%、治療の意思決定16%、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)14%の順であり、コーピングやコミュニケーションへの支援が早期緩和ケア介入の鍵となる可能性が考察された(PMID: 28029308)。その仮説を媒介分析という比較的新しい手法により検証したのが本論文である。
 媒介分析は二つの変数の間の因果関係を媒介する変数の影響を検討する手法である。段階的な回帰分析により要因間の関連を検証し、最終的に介入と媒介変数の交互作用の分析により間接効果(媒介効果、介入が媒介変数を介してアウトカムに与える効果)を検証する。本論文では、接近型コーピングの変化を介してQOLや抑うつの改善がみられ、接近型コーピングの変化のない場合はアウトカムの変化も少ないという結果が得られた。
 本論文は早期緩和ケア介入のQOLや抑うつの改善に患者のコーピングの変化が重要な鍵となる臨床的な示唆を与えた点と、媒介分析という新しい分析手法を有効に活用した点で注目に値する。

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