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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.78
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2018  78
Journal Club
緩和ケア治療を受ける進行がん患者における興奮性せん妄に対する
ハロペリドール単独vsハロペリドール+ロラゼパムの無作為化比較試験
静岡県立静岡がんセンター 薬剤部
佐藤 淳也
Hui D, Frisbee-Hume S, Wilson A, Dibaj SS, Nguyen T, De La Cruz M, Walker P, Zhukovsky DS, Delgado-Guay M, Vidal M, Epner D, Reddy A, Tanco K, Williams J, Hall S, Liu D, Hess K, Amin S, Breitbart W, Bruera E. Effect of Lorazepam With Haloperidol vs Haloperidol Alone on Agitated Delirium in Patients With Advanced Cancer Receiving Palliative Care: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2017 Sep 19;318(11):1047-1056. doi: 10.1001/jama.2017.11468.

【目的】
 せん妄による不穏状態に対するベンゾジアゼピン系薬剤(BZPs)の有効性については、意見が分かれていた。これには、プラセボを使用したランダム化試験がなかったことに起因する。そこで、せん妄の標準的治療薬であるハロペリドールに、ロラゼパムを併用した有効性について検討した。
【方法】
 対象は、MDアンダーソンがんセンターの緩和ケア部門に入院した患者のうち、定期的なハロペリドール使用によっても興奮性せん妄を生じた93名とした。これら患者をハロペリドール(2mg)の静注に加え、ロラゼパム(3mg)あるいはプラセボの静注を併用した2群に振り分けた。主要評価項目は、Richmond Agitation-Sedation Scale(RASS;-5 [昏睡]から4 [興奮・好戦的な状態])を用いて、投与から8時間の患者の症状を評価した。副次評価項目は、レスキューとしての抗精神病薬の追加使用、治療内容をブラインドされた医療者による症状評価、副作用、生存期間などとした。
【結果】
 ハロペリドールにロラゼパムを併用した患者(47名)においては、プラセボを使用した患者(43名)に比べ、RASSが有意に低下した(-4.1 vs -2.3 points, [95% CI, -2.8 to -0.9]; p<0.001)。効果は、投与30分後から8時間目まで認められた。また、レスキューとしての抗精神病薬の追加投与量も有意に低下した(2.0 vs 4.0 mg [95% CI, -2.0 to 0]; P = 0.009)。さらに、症状の改善を認めた医療者の割合も有意に増加した(介護者評価; 84 vs 37% [95% CI, 14% to 73%], p=0.007; 看護師評価: 77 vs 30% [95% CI, 17% to 71%], p=0.005)。介入からの生存期間は、両群で差がなかった(68 vs 73 hr, p=0.56)。最も多い副作用は、アキネジアであったが、その頻度には差がなかった(19 vs 27%, p=0.60)。
【考察】
 興奮性せん妄に対する標準的治療薬であるハロペリドールにロラゼパムを併用することは、症状改善に有益な効果を認めた。ただし、著者らは、単施設の研究であること、投与量が単一であること(特に3mgのロラゼパムは、肝機能障害を有するような一部の患者には、過量である可能性がある)、サンプルサイズの少なさなどの研究の限界があり、今後の追試が必要であるとしている。
【コメント】
 これまでBZPsは、ハロペリドールやクロルプロマジンとの比較において、せん妄の悪化のみならず過鎮静などの副作用が指摘されてきた(Am J Psychiatry 1996;153:231-7)。また、系統的レビューにおいてもBZPsが有効なせん妄は、アルコール離脱せん妄などの患者に限られるとされてきた(Cochrane Database Syst Rev 2009b;CD006379)。一方で、BZPsは、せん妄の薬物的な要因ともされながら、興奮が強く、抗精神病薬が無効の場合、FlunitrazepamあるいはMidazolamなどが使用される場合もある。今回の研究は、せん妄治療に対するBZPsの無益性を覆し、併用による新たな治療有益性を示したものと思われる。最近、せん妄に対するハロペリドールの使用は、生存期間への悪影響が報告されている(JAMA Intern Med 2017;177:34-42)。BZPsとの併用によりハロペリドールが減量できる可能性があれば、有益であろうと期待される。

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