line
Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.78
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2018  78
巻頭言
緩和ケア研修会の新しい指針
−すべての医療者への拡大とeラーニングの導入に向けて−
市立札幌病院 精神医療センター
上村 恵一
 がん診療に携わる医師における修了者が10万人を突破した緩和ケア研修会は、2017年12月1日に新しく発出された「がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会の開催指針」に基づき大きな変革、つまりすべての医療者を受講対象に広げることと、eラーニングが導入されること、を遂げることになります。
 これは、昨年に改訂されたがん対策基本計画の中の取り組むべき施策の中に「国は、チーム医療の観点から、 看護師、薬剤師等の医療従事者が受講可能となるよう、研修会の内容・体制を検討する。」、「国は、関係団体の協力の下に、拠点病院等における研修会の開催にかかる負担や、受講者にかかる負担を軽減するため、座学部分はe-learningを導入すること、1日の集合研修に変更すること等、研修会の実施形式についての見直しを行う。」との記載があったことによるものです。
 日本緩和医療学会では委託事業委員会 緩和ケア研修WPGを中心に研修教材のeラーニングシステムの導入の準備に日々追われています。緩和ケア研修会の受講希望者がeラーニングを受講し、eラーニング修了証を発行し、集合研修に申し込みます。他方で、受講希望者からの申し込みを確認した集合研修開催担当者は、システム上で受講者を管理し、集合研修の申し込みを確認してから、集合研修修了までの進捗を管理する責任を担っています。
 eラーニングの導入は、集合研修にかかる参加者の時間的負担、開催者の経済的、時間的負担を 軽減させることが期待される一方で、学習効果がこれまでよりも低下してしまう懸念があります。つまり学習意欲の高い参加者に、さらに高い学習効果を生む自由度の高い構造を特徴としています。従来の受動的な動画視聴ではなく、学習者のスピードに合わせて進むことができる工夫をしています。さらに集合研修の冒頭に、eラーニングでの受講内容を振り返ることができるセッションを用意し、質疑応答をしながら、システムでの学習内容を想起できる構造になっています。
 しかし、看護師、薬剤師が多く参加されることが想定される職種拡大については様々な課題が残されています。それは、看護師、薬剤師の緩和ケア教育において一定の役割を果たしている様々な教材(日本緩和医療学会が作成しているELNEC-Jコアカリキュラムや一般社団法人緩和医療薬学会が作成しているPEOPLE)との役割分担です。今後、日本緩和医療学会は、それぞれの職種の緩和ケア教育に共通するエッセンスと職種独自のエッセンスを見極め、それを整理した教育教材を用意すること、すなわちeラーニングシステムにおいては職種によって必要な知識をそれぞれが得ることができるような構造を用意することが必要ではないかと思います。
 このような受講者の多彩な構造に対応した多くの学習教材を置いておくことができ、受講者のニーズにあった内容が選択できるときにeラーニング導入の真の成果が発揮されるのではないかと思います。
 研修会の大きな変革、eラーニングの導入を決して負担軽減のために学習効果の低下を余儀なくするものと悲嘆せず、職種の垣根を超えた共通プロジェクトへの第一歩であることを願って取り組んでいきたいと思っています。

Close