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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.77
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2017  77
よもやま話

「オピオイド注射薬の持続投与が必要な在宅療養患者の
夜間・休日の薬物供給システムの検討」in 札幌

株式会社メディカルシステムネットワーク
薬局事業本部 地域薬局事業部
在宅推進セクション・医療連携セクション  土井 真喜
 昨年8月から1年かけて、札幌市とその近郊エリアを対象に、「オピオイド注射薬の持続投与が必要な在宅療養患者の夜間・休日の薬物供給システムの検討」という臨床研究を実施しました。この研究の目的と簡単な概要について少しご紹介したいと思います。
 研究開始の発端は、札幌市内で開催された「Palliative Care Session〜在宅の薬物療法について考える〜」の研修会で、保険薬局の現状と在宅緩和ケアを行う上でのオピオイドの供給や在宅における薬剤の使用規制などについてお話しさせていただいたのがきっかけでした。その時の研修会に参加されていた一人の医師から、オピオイド注射薬の夜間・休日の連携について、一緒に研究しないかとお声掛けいただきました。以前からずっと気になっていた課題であり、喜び勇んで参加しました。研究助成金の申請を行い、無事、資金を獲得!さっそく研究を開始しました。
 この研究は、患者さま・ご家族が望む場所での療養を維持するために、安定した薬剤供給の連携方法を検討するものです。私たちは、一番対応が困難と思われる「夜間・休日のオピオイド注射薬供給」に関する連携モデルを構築できれば、あらゆる症例に対応できるのではないかと考えました。
 札幌市内には約760店舗の保険薬局がありますが、そのうち在宅訪問に対応している薬局は310店舗、無菌調剤処理加算届出薬局(無菌調製に対応可能な設備を有している薬局)は27店舗(札幌市内薬局の3.5%)であり、独自の調査によると、オピオイド注射薬の無菌調製を実際に行っている薬局は1%に満たない状況でした(2016年6月時点)。薬局開局時間内での薬剤供給はさほど問題はないと思いますが、時間外の予測不能な緊急麻薬調剤の場合、在庫が不足して対応できない可能性があります(医療用麻薬は返品不可の為、必要最小限の在庫で管理していること、夜間・休日の麻薬入荷ルートがないことなどが理由)。在宅緩和ケアを支えるためには、24時間365日の薬剤供給体制が理想ですが、多くの保険薬局は人員不足などの理由で、薬剤師の24時間体制を確保することが難しい状況です。時間外対応に対するフィーも僅かであり、訪問を担当する薬剤師の個々の努力で対応しています。更に、医師側は薬局に依頼したくても「どこの薬局がどこまで対応できるかわからない。」「緊急対応時に依頼できる薬局がわからない。」など、連携先を見つけることもままなりません。このような困難な状況下でも、診療所医師と保険薬局薬剤師が互いに連携し合い、無理なく実施できる連携モデルの構築を目指しました。
 実施した研究内容は以下の3つです。
 @札幌近郊のオピオイド注射薬調剤の現状に関するアンケート調査
  在宅療養支援診療所の医師と在宅業務を定期的に行っている保険薬局薬剤師を対象に調査を実施しました。その結果、在宅緩和ケアが、ほんの一部の医師・薬剤師で支えられている現状が分かりました。
 Aクリーンベンチを所有する札幌市内の保険薬局に対するインタビュー調査
  オピオイド注射薬の供給に関して、薬局薬剤師が抱えている苦悩や夜間・休日対応に関する問題点についてインタビューをしました。非常に多くの課題が抽出されました。
 B夜間・日祝対応のオピオイド注射薬処方連携システムの構築
  札幌市内の3診療所と5薬局で連携チームを作り、共に議論しながら運用ルールや連携ツールを作成し、実践しました。今回の実践では、連携システムの存在が医師の休日対応時の安心感につながりました。連携チーム間で実施した複数のミーティングは、課題解決に向けた双方向の議論となり、お互いの業務の状況や考え方を知る機会となりました。そのため、ただ単に運用ルールを遵守する連携にはとどまらず、互いを気遣う連携へと発展しました。
これらの結果の詳細は各種学会・論文などで皆様と共有させていただきたいと思います。
 今後の課題は、本研究の連携システムをどのように現場に定着させ、拡大していくかです。まずは、第一歩として、本研究の報告会兼グループワークを実施しました。
 医師・薬剤師・看護師・MSWが50名以上集まり、グループ毎に在宅緩和ケアに関する課題やこれから実施したいことを話し合いました。お互いの活動や人柄を知ることで、新たな連携先をみつける機会にもなったようです。
 今回は、医師・薬剤師を中心に作った連携チームでしたが、今後は地域の拡大と共に、連携職種の拡大も必要です。遠方のがん診療連携拠点病院にて治療を受け、自宅に戻って在宅療養をする事例の多い北海道は、各地に点在する連携チームをつなぐ活動が非常に重要と考えます。各地に多職種の連携チームが結成され、それらを繋ぐネットワークが整備できれば、在宅療養を希望する患者さまがご自身の望む場所で過ごすことが今まで以上に可能になると思われます。今後もこれらの実現に向けて、医師の連絡会や薬剤師会などと連携しながら、地道に活動していきたいと思います。

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