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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.77
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2017  77
Journal Club
進行がん患者におけるオピオイド鎮痛薬の感染症への影響
山形大学医学部附属病院 薬剤部
志田 敏宏

Shao YJ1, Liu WS, Guan BQ, Hao JL, Ji K, Cheng XJ, Wang K. Contribution of Opiate Analgesics to the Development of Infections in Advanced Cancer Patients. Clin J Pain. 2017 Apr;33(4):295-299. doi: 10.1097/AJP.0000000000000405.

【目的】
 オピオイド鎮痛薬はがん性疼痛に有効であることが証明されている。しかし、in vitroまたは動物実験において、モルヒネがインターロイキン2やナチュラルキラー細胞の異常を誘発することや、インターフェロンのレベルを抑制するなど、オピオイドが免疫を抑制すると報告した論文が散見されるが、がん患者の感染症の発症との関係においての報告は限られている。本研究ではがん疼痛管理において、オピオイドの投与と感染症の発症について調査した。
【方法】
 2013年1月から2014年10月まで、モルヒネ、オキシコドンおよびフェンタニルの投与を受けた642人を対象とし、オピオイドを14日間投与した翌日から投与後終了30日までを調査した。二項ロジスティック回帰分析を用いて、感染症の発症に影響する因子を分析した。
【結果】
 合計303人の患者が最終分析の対象で、194人が単一成分を投与しており109人が多成分併用であった。平均投与量は1日あたりの経口モルヒネ当量(oral morphine equivalent: OME)として219.3±344mgであった。全体で87人(28.7%)の患者が感染症を発症した(モルヒネ23.5%、オキシコドン24.4%、フェンタニル20.6%)。各薬剤における感染症の発症率および感染部位に有意差は認められなかった。ロジスティック回帰分析では、単一成分投与群においてOMEが、感染症に影響を及ぼす独立因子としてあげられた(オッズ比=1.002、P<0.01)。感染発症のリスクは、OME 10mgの増加につき2%増加した。
【考察】
 オピオイド投与量の増加は感染症のリスク因子であることが考えられた。また、オピオイドの種類による感染リスクの差は認められなかった。研究限界として、ランダム化比較をしていないこと、併用薬の免疫への影響を考慮していないことがあげられる。
【コメント】
 本論文では、オピオイド鎮痛薬が免疫を抑制することを示唆している。モルヒネの免疫学的副作用は動物実験や細胞レベルでの報告が散見されるが、結論を導くには困難であると思われ、臨床においてはさらに詳細な議論の余地がある。特にがん患者においては、疼痛管理が重要である一方で、化学療法の影響で免疫が低下しており、オピオイドの免疫的副作用にも考慮した大規模な臨床的検討が期待される。

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