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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.77
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2017  77
Journal Club
 
急性期老年科病棟における看取りのプログラム(Care Programme for the Last Days of Life:CAREFuL)の効果:クラスターランダム化比較試験
国立研究開発法人国立がん研究センター
先端医療開発センター 精神腫瘍学開発分野
菅野 雄介

Beernaert K, Smets T, Cohen J, Verhofstede R, Costantini M, Eecloo K, Van Den Noortgate N, Deliens L. Improving comfort around dying in elderly people: a cluster randomised controlled trial. Lancet. 2017 Jul 8;390(10090):125-134. doi: 10.1016/S0140-6736(17)31265-5. Epub 2017 May 16.

【目的】
 高齢者の多くは急性期病院で最期を迎えているが、看取りのケアの質は十分とは言えない。本研究では、看取り期(臨死期)にある高齢者の安楽やケアの質を改善することを目的に、看取りのプログラム(CAREFuL)を開発し、その有効性をクラスターランダム化比較試験にて検証した。
【方法】
 調査は、2012年10月から2015年3月に行なわれ、ベルギーの病院10施設のうち、急性期老年科病棟をクラスター単位とし、CAREFuL群と通常ケア群に無作為に割付た。CAREFuL群では、医療者を対象に、@実践ガイド(2日間の看取り教育)、A予後数日のケアガイド(記録やチェックリストなど)、B補助教材(リーフレットなど)の3つのパートからなるプログラムを導入し看取りの教育とトレーニングを行なった。通常ケア群は、日常診療で行なわれている看取りのケアを行なった。主要エンドポイントは、死亡前48時間の安楽と症状マネジメントとし、看護師と遺族が評価した。
【結果】
 調査期間中に死亡し対象となった患者はCAREFuL群で164名、通常ケア群で118名であった。看護師による死亡前48時間の安楽の評価では、通常ケア群に比べCAREFuL群で有意差が検出されたが(p<0.0001)、症状マネジメントでは有意差なし(p=0.58)。遺族では、安楽と症状マネジメントの評価で有意差が示されず(p=0.82; p=0.71)、またCAREFuL群で満足度は低かった(p=0.04)。
【結論】
 看取りのプログラム(CAREFuL)は、遺族による看取り期(臨死期)の安楽や症状マネジメントの評価で有効性が示されなかったが、看護師のケアガイドになり、看取りのケアの質の向上に寄与するかもしれない。
【コメント】
 本研究のCAREFuLは、看取りのパスLiverpool Care Pathway(LCP)の構成要素を参考に開発され、LCPイタリア版でランダム化比較試験(Costantini M,et al. Lancet 2014)を行なったCostantini氏も研究グループに参加し、同様のデザインで有効性を検証した。今回の結果では、看護師の評価で有効性は示されたものの、遺族の評価では示されなかった。特に注視することは、通常ケア群に比べ、CAREFuL群で満足度が低かったことである。この結果に対し、Beernaert氏は、通常ケア群での医療者と患者・家族とのコミュニケーションが十分に行なわれており、満足度に影響がみられたかもしれない(ホーソン効果)と考察している。また、同誌の記事でAslakson氏は、遺族の応諾率が低く(CAREFuL群29%、通常ケア群19%)、バイアスが生じていた可能性を指摘している(Aslakson RA, et al. Lancet 2017)。本研究の結果を解釈する上で、MORECare statement(Higginson IJ, et al. BMC Med 2013)に準じた量的質的検討が必要であると考える。
 最後に、CAREFuLの効果においては、更なる検討が必要ではあるものの、高齢者共通の看取り期(臨死期)のコンポネントが系統的にプログラム化されており、超高齢社会を迎えたわが国での看取り教育において参考になると考える。

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