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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.76
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2017  76
Journal Club

Webによる患者報告に基づく症状モニタリングと
通常ケアとの単施設による無作為化比較試験:生存時間解析

国立研究開発法人 国立がん研究センター
先端医療開発センター 精神腫瘍学開発分野
菅野 雄介、小川 朝生
Basch E, Deal AM, Dueck AC, Scher HI, Kris MG, Hudis C, Schrag D. Overall Survival Results of a Trial Assessing Patient-Reported Outcomes for Symptom Monitoring During Routine Cancer Treatment. JAMA. 2017 Jul 11;318(2):197-198. doi: 10.1001/jama.2017.7156.

【目的】
 臨床において、電子システムを用いた患者報告型の症状モニタリングに関心が高くなっているが、その有効性を示すエビデンスに限りがある。本研究では、Webによる患者報告(PRO; patient-reported outcomes)に基づく症状モニタリングと通常ケアとの単施設による無作為化比較試験(Basch E. J Clin Oncol 2016)の二次解析として、生存期間について調査した。
【方法】
 調査は、2007年9月から2011年1月に、メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターの外来に受診し、転移のある固形がんでがん化学療法を受ける患者766名を、通常ケア群とPRO群に無作為に割付けした。PRO群では、患者はWeb上で12症状(食思不信、便秘、咳嗽、下痢、呼吸困難、排尿障害、倦怠感、ほてり、嘔気、嘔吐、疼痛、神経紹介)を評価し、症状が強い項目に対し主に看護師による訪問または電話にて症状マネジメントが行われた。通常ケア群では、外来時に医療者に症状を伝え治療やケアが行われた。解析は、カプランマイヤー法、コックス比例ハザード回帰による生存時間解析を行った。
【結果】
 766名が無作為割付けされ、年齢の中央値が61歳、白人が86%、女性が58%であった。フォローアップ期間の中央値が7年で、2016年6月時点で517名(67%)が死亡した。生存期間の中央値では、PRO群で31.2カ月(95%信頼区間, 24.5-39.6)、通常ケア群で26カ月(22.1-30.9)であった(Log-rank test: P=0.03)。また、ハザード比は0.83(95%信頼区間, 0.70-0.99;P=0.04)であった。
【結論】
 電子システムを用いた患者報告型の症状モニタリングは、質の高いケアを提供するための一部であるかもしれない。
【コメント】
 本研究は、ASCO2017で発表され、BMJ誌でもResearch Newsで取り上げられている(Mayor S. BMJ 2017)。著者らは、Webベースによる症状モニタリングシステムを導入したことで、中程度以上の症状への適時適切な対応が可能となり、重症化の予防につながったと考察しており、がん化学療法の継続期間にも統計学的に有意な差が示されている(Basch E. J Clin Oncol 2016)。
 国立がん研究センター東病院では、Webベースの症状モニタリングシステムとして、ESAS-r日本語版を外来に試験的に導入している。今後は、PRO-CTCAE日本語版も内蔵し、抗がん治療の有害事象のモニタリングシステムを構築していく予定である。

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