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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.76
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2017  76
Journal Club
終末期がん患者のQOLにLocus of controlが与える影響
名古屋大学大学院医学系研究科
杉村 鮎美
Brown AJ, Thaker PH, Sun CC, Urbauer DL, Bruera E, Bodurka DC, Ramondetta LM. Nothing left to chance? The impact of locus of control on physical and mental quality of life in terminal cancer patients. Support Care Cancer. 2017 Jun;25(6):1985-1991. PMID:28175997

【目的】
 Locus of control(LOC)は自分の行動を統制する主体の存在がどこにあると認識しているかにより、内的統制と外的統制に分けられる。内的統制は自分で統制できると認識し、外的統制は他者や偶然・運により統制されると認識する。外的統制を認識している者は低いQOLや精神健康に影響している可能性が示唆されており、高いがん患者のうつ罹患率にも関連している。そこで本研究の目的は、終末期がん患者の様々なQOLと精神的健康にLOCが与える影響を明らかにすることである。
【方法】
 MDアンダーソンがんセンターのサポーティブケア 部門の新規外来患者の内、進行がんと診断され余命6カ月以上の者に対して、5つの尺度(LOC scale, QOL のスピリチュアリティの測定尺度:FACIT-Sp, QOLの測定尺度:FACT-G, 希望の測定尺度:Herth Hope Index, 不安と抑うつの測定尺度:HADS)を用いて調査した。LOC Scaleの3つの下位尺度(内的、偶然、他者)を従属変数、その他の尺度を説明変数として多変量解析を用いて関連を明らかにした。下位項目の「内的」は内的統制、「偶然」と「他者」は外的統制を示す。
【結果】
 100名の患者が研究に参加し、診断後経過日数の中央値は0.83カ月であった。多変量解析の結果、統制の所在を「偶然」と認識している(LOC chance)者ほど、QOLの総合評価(FACT-G, 偏回帰係数β=-1.05)、スピリチュアルな側面(FACIT-Sp, 信念β=-0.35, 生きる意味/平穏β=-0.64)、希望(HHI, β=-0.47)が低く、不安や抑うつ(HADS, 不安β=0.33, 抑うつβ=0.27,)が高かった。「内的」と「他者」に統制の所在を認識している者は、QOLや精神健康に影響をしていなかった。
【結論】
 行動統制の所在を「偶然」と捉える傾向のあるがん患者は、終末期にQOLや精神面の健康を損なう可能性がある。そのため、患者の早期スクリーニングと対象患者のコントロール感を改善させる介入を行う必要がある。
【コメント】
 LOCは、がん患者のQOL低下や抑うつを早期に予測し、効果的な心理療法を行うための患者特性を示す有用な指標である可能性が示唆された。日本においても文化的背景を考慮したLOC尺度が複数開発されている(堀毛, 1991; 鎌原ら, 1982; 渡辺, 1986)ため、臨床においてスクリーニングツールとして活用が期待される。一方で、LOC介入の縦断的な効果検証やLOCに合わせた効果的な心理療法の開発が望まれる。

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