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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.76
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2017  76
Journal Club
緩和ケアユニットに入院した進行がん患者における飲酒と喫煙習慣の影響
静岡県立静岡がんセンター 薬剤部
佐藤 淳也
Mercadante S, Adile C, Ferrera P, Casuccio A. The effects of alcoholism and smoking on advanced cancer patients admitted to an acute supportive/palliative care unit. Support Care Cancer. 2017 Jul;25(7):2147-2153.

【目的】
 本研究は、緩和ケアユニットに入院した進行がん患者における症状と飲酒、喫煙習慣の関連を前向きに検証することである。
【方法】
 入院患者の身体的および心因性症状は、Edmonton Symptom Assessment Scale(ESAS)により評価された。 また、飲酒習慣については、CAGEテスト(問題のある飲酒習慣についての4項目の質問、2つ以上該当でアルコール依存とされる)を用いて行われた。喫煙習慣については、患者は、持続的な喫煙者(PS)、元喫煙者(FS)と非喫煙者(NS)と3つの群に分けられた。せん妄の有無は、Memorial Delirium Assessment Scale(MDAS)を用いて評価された。
【結果】
 314名の患者が調査対象となった。喫煙習慣については、現喫煙者;47名(14.9%)、過去喫煙者;143名(45.5%)と非喫煙者;124名(39.5%)であった。また、飲酒習慣における問題のある飲酒習慣の有無については、16例の患者がCAGE陽性であった。現喫煙者では、他喫煙状態の患者に対して病気への認識が低かった(p=0.048)。また、ESASによる各症状は、CAGE陽性の患者では陰性の患者に比べ悪心(入院時;4.6 vs 1.9, p<0.0005)、呼吸困難(入院時;4.6 vs 2.3, p=0.008, 退院時;2.9 vs 1.3, p=0.023)と全体的な調子(退院時;5.8 vs 3.6, p =0.003)において有意に高い値(症状が重い)を示した。経口モルヒネ換算使用量は、CAGE陽性患者で陰性者に比べ多い傾向を示したが統計的有意差を認めなかった(入院時〜退院時;121〜102 vs 77〜80mg)。CAGE陽性の患者と喫煙者の間で、症状発現の相関はなかった。
【考察】
 本研究は、単一施設での研究ながらアルコール依存と喫煙状態は、進行がん患者への緩和医療の症状進行や病気に認識に影響しているであろうと結論している。
【コメント】
 日本における生活習慣病リスクを生じる飲酒習慣は、男性15.8%、女性8.8%と決して少なくない(平成26年「国民健康・栄養調査」)。また、喫煙率も、同様に男性29.7%、女性9.7%と示されている(JT全国喫煙者率調査)。これら数値からも、本邦の緩和ケアを受けるがん患者においても、飲酒や喫煙習慣のある場合が少なくないと予想される。また、これら習慣のない患者に比べ、緩和ケアを受ける時点で既に症状が増悪しているあるいは治療経過中症状が増悪しやすい可能性を踏まえて治療に臨むことが期待される。

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