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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.76
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2017  76
Journal Club
死亡前の化学療法の関連要因
名古屋大学大学院医学系研究科
看護学専攻基礎・臨床看護学講座  佐藤 一樹
Rochigneux P, Raoul JL, Beaussant Y, Aubry R, Goldwasser F, Tournigand C, Morin L. Use of chemotherapy near the end of life: what factors matter? Ann Oncol. 2017 Apr 1;28(4):809-817. PMID:27993817

【目的】
 進行がん患者に対する死亡直前の抗がん剤投与は効果は見込めず有害事象も生じうるが、その実施の要因に関する研究は乏しい。死亡前数カ月間での抗がん剤投与に関連する患者・疾患・施設要因を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 フランスのがん登録データを用い、2010〜2013年に転移性固形がんのため死亡したすべての成人入院患者279,846名のデータを取得した。死亡前3カ月以内の抗がん剤投与は、内服を含み、入院・外来・在宅で1種類以上の抗がん剤を投与されていることで定義した。死亡前1カ月以内の新規抗がん剤投与は、死亡2〜3カ月前に抗がん剤投与がなく死亡前1カ月以内に抗がん剤投与があることで定義した。ただし、臨床試験での抗がん剤投与は除外した。また、抗がん剤の感受性をFirst-lineの抗がん剤治療の奏効率により定義した。
【結果】
 死亡前の抗がん剤投与を受けた割合は、死亡前3カ月以内で39.1%、1カ月以内で19.5%、2週間以内で11.3%であった。
 死亡前1カ月以内での抗がん剤投与は、患者要因では女性の方が少なく、高齢ほど少なく、併存疾患を有する方が少なく、がん原発部位により異なり、施設要因では施設種別により異なり、化学療法を多く行う施設の方が多く、緩和ケア病棟のない病院の方が多かった。
 死亡前1カ月以内での新規抗がん剤投与を受けた割合は6.6%で、その関連要因は抗がん剤投与の要因と同様の傾向であった。
 抗がん剤の感受性が高いがん原発部位の方が死亡前1カ月以内の抗がん剤投与は多かった。しかし、90歳以上の高齢者や小規模な公立病院では抗がん剤の感受性と死亡前の抗がん剤投与が関連しなかった。また、精巣がんと卵巣がんを除くがんでは抗がん剤感受性と死亡前の抗がん剤投与が関連しなかった。
【結論】
 入院がん患者では、若年で、がん専門病院や抗がん剤実施件数の多い病院であり、緩和ケア病棟を有さない病院で死亡前の抗がん剤投与が多い傾向がみられた。また、抗がん剤の感受性の高いがんほど死亡前の抗がん剤投与が多いという傾向はみられなかった。
【コメント】
 死亡前の抗がん剤投与や新規抗がん剤投与はがん終末期の積極治療の質指標とされ、ベンチマークとして死亡前1カ月以内の抗がん剤投与では10%、死亡前2週間以内の新規抗がん剤投与では2%が提案されている。本研究では入院患者に限定したため、より高頻度であったのかもしれない。これまでコホート研究により進行がん患者ががん治療の目標を根治目的と正しく認識していないと死亡前の抗がん剤投与が増加し、死亡前の抗がん剤投与によるQOL改善は示さなかった。抗がん剤治療終了の意思決定はがん医療の重要なテーマの1つである。
 死亡前の抗がん剤投与が一部のがんを除いて抗がん剤の感受性と関連しなかったことは注目に値する。著者らは死亡前の抗がん剤投与について、一律の適切性の判断基準を設けるのではなく、疾患、身体症状、患者の意向により個別的にニードをアセスメントすることが重要と論じ、患者と共有した意思決定や個別化した終末期医療の意思決定に焦点化したガイドラインの必要であることを訴えて結論とした。

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