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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.75
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2017  75
委員会活動報告
医学生セミナーWPG活動報告
教育・研修委員会 医学生セミナーWPG
WPG員長  山代 亜紀子
WPG員  奥山 慎一郎、佐藤 哲観
西 智弘、松原 貴子
 医学生セミナーWPGでは、医学生・若手医師の「緩和ケアには興味があるけれどどのようにキャリアを形成していけばよいのかわからない」といった声を拾い上げ、毎年夏にキャリア形成支援のためのセミナーを開催しています。2009年より「医学生・研修医・若手医師のための緩和ケアセミナー」として始まり、2013年からは「医学生・若手医師のための緩和ケア夏季セミナー」として形式を1泊2日の宿泊研修に変更し、全国各地から緩和ケアを志す医学生、若手医師が集まり積極的な意見交換や相談、交流を行っています。
 2016年度の第4回セミナーは8月に兵庫県淡路夢舞台国際会議場で開催し、大学1回生から卒後10年目までの医師42名が参加者として、10年目以降の医師2名がオブザーバーとして参加しました。また、セミナーの構成に緩和医療の専門的な研修のプログラム紹介が組み込まれており、緩和ケアの教育研修施設より9名が施設紹介者として参加し、多職種のファシリテーターと共に医学生・若手医師の日々の学習や臨床での疑問や進路の悩みなどを直接相談する機会となりました。
 セミナーの内容は、1日目に基調講演として高宮有介先生(昭和大学医学部)に「緩和ケアを目指す若者に伝えたいこと」を、「私のキャリアパス」として濱口大輔先生(医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院)、岡本拓也先生(聖ヶ丘病院サテライトクリニック)、松原貴子先生(三重大学医学部付属病院 緩和ケアセンター)の3名にキャリア形成モデルとしてそれぞれの経験をお話いただきました。全体セッションは「みんなで語ろう!これからの緩和ケアにできること」をワールドカフェ形式で行い、参加者が常日頃の自分の考えや疑問などを声に出して語り相互に学び合う場となりました。2日目は、4つの分科会を設定し、濱口先生に「痛みをとりながら成長しよう」、山田圭輔先生(金沢大学附属病院 麻酔科蘇生科)に「がん哲学に関するワークショップ」、岡本先生に「構造構成主義で考える緩和ケア」、西智弘先生(かわさき総合ケアセンター)に「『あとどのくらい生きられるのでしょうか?』と聞かれたら」のセッションを担当いただき、各参加者の学習・臨床レベルに応じて、単なる知識、技術ではなく、緩和ケアを担う医療人としての姿勢についても考えることのできる充実した内容となりました。最後の全体セッションでは佐藤哲観先生(静岡県立がんセンター 緩和医療科)より「これから取り組む緩和ケア〜明日からの決意表明」で2日間のセミナーの振り返りを行い、それぞれが決意を新たにしました。どの参加者も熱心に取り組んでおり、若手ならではの率直な意見や疑問が飛び交い、地域や学年を越えて楽しみながら学習していく姿が非常に印象的でした。
 セミナー後に記入していただいた参加者アンケートでは、参加動機として(複数回答可)、「緩和ケアに関心がある」(41%)、「将来、緩和ケア医として働きたいと考えている」(19%)、「専攻する診療科は違うが、緩和ケアの知識は必要だと思うので」(12%)「その他(友人に誘われた、など)」(14%)が挙げられ、セミナー全体は「ニードとマッチしていた」「ややマッチしていた」と答えた参加者が78.9%となりました。自由記述式の感想では「思考や学問的なところから、実践的で普段練習できないことまで学べて貴重な経験となった」「研修病院の紹介や、講師の先生方とざっくばらんに話すことができ、自分の将来や選択について考えるヒントや機会となった」「実際に緩和ケア科・緩和ケア医として働いている先生方の話を聞けた事が新鮮で有意義な時間だった」「同じ考えの同世代の学生や先生と話す機会を得られてよかった」など、満足度の高い評価をいただきました。
 また2016年度は、セミナーのアウトカムメジャーとしてプレ・ポストで11段階のアンケートを行い、参加者のセミナー受講前後の意識変化を測定しました。「自身で緩和ケアを提供していくことに不安がある」「緩和ケアという分野について敷居が高いと感じる」「緩和ケア医のキャリアについて不明瞭と感じる」「緩和ケアの研修・学習を受けていくうえでの不安がある」「緩和ケアが具体的に何をしているのかがよくわからない」の項目は有意に改善しました。一方、「将来、緩和ケアの専門医を目指したい」、「緩和ケア専門医は目指さないが、緩和ケアについて継続的に学びたい」の項目はもともと数値が高くセミナー前後で有意な変化はありませんでした。これらの結果よりセミナー参加者は、専門的または他科であっても積極的に緩和ケアに関わりたいという意識を持っていますが、緩和ケア分野への抵抗感やキャリアへの不安が強いという特徴があり、セミナーに参加することによってこれらの課題がある程度解決されている事が示唆されました。セミナーの実施が医学生・若手医師の緩和ケアに対するバリアを解く役割を担い、将来的に国内の緩和ケアの発展に資する人材を増やす事に寄与できる可能性が示されています。今後も継続的に測定を行い、医学生・若手医師のニーズを引き出しより有用なセミナーとなるよう改善を重ねていく次第です。
 今後の課題としては、臨床研修制度、専門医制度の変化、緩和ケア領域での研修可能施設の増加に伴い、専門医をはじめとするより具体的なキャリア形成への相談に乗ることや、実際のロールモデルとなる医師と若手医師を繋ぐ支援などが挙げられます。
 2017年度も「第5回 医学生・若手医師のための緩和ケア夏季セミナー」を以下の日程で開催する予定です。緩和ケア領域でのキャリアを考えている医学生・若手医師、また日々の教育、臨床の中で「若手を育てる」役割を担う皆様にぜひご参加いただき、よりよい研鑽の場となることをWPG員一同切に願っております。

 第5回 医学生・若手医師のための緩和ケア夏季セミナー開催概要
 日  時:2017年8月19日(土)〜20日(日)
 会  場:淡路夢舞台 国際会議場
 対  象:将来、緩和ケアの実践・研究を目指す医学生、研修医、若手医師(卒後10年まで)
 募集定員:60人
 募集開始:2017年6月初旬頃を予定(日本緩和医療学会HPにて)
 ※オブザーバー、緩和ケアの専門的なプログラム紹介を行う施設紹介者の参加も受け付けております

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