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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.75
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2017  75
Journal Club
緩和ケアを受けている患者のせん妄に対する、リスペリドン、ハロペリドール、
プラセボの経口投与による効能に関するランダム化比較試験
東北大学大学院医学系研究科
保健学専攻 緩和ケア看護学分野  清水 陽一
Agar MR, Lawlor PG, Quinn S, Draper B, Caplan GA, Rowett D, Sanderson C, Hardy J, Le B, Eckermann S, McCaffrey N, Devilee L, Fazekas B, Hill M, Currow DC. Efficacy of Oral Risperidone, Haloperidol, or Placebo for Symptoms of Delirium Among Patients in Palliative Care: A Randomized Clinical Trial.JAMA Intern Med. 2017 Jan 1;177(1):34-42.

【目的】
 緩和ケアを受けている患者の苦痛に関連したせん妄に対するリスペリドン、ハロペリドール、プラセボの効能を比較するためにランダム化比較試験を行った。
【方法】
 2008年8月13日〜2014年4月2日に入院型のホスピスもしくは病院の緩和ケアサービスを利用していた、せん妄(診断がある(DSM-4-TR)、MDAS≧7、Delirium Symptom Score(NuDESCのうち、行動、会話、認識の3項目の合計点)≧1)のある予後不良の患者を対象に、2重盲検化ランダム化比較試験を行った。なお、投与量は年齢とDelirium Symptom Scoreの値を用いて先行研究に基づいたプロトコルに従い調整した。12時間ごとに72時間、投与を行い、プライマリーエンドポイントがベースラインと72時間後のDelirium Symptom Scoreの差、セカンダリーエンドポイントが、症状の強さ(MDAS、Delirium Symptom Scoreの最低値)、ミタゾラムの使用の有無、錐体外路症状の有無、鎮静状況、生存期間で評価した。
【結果】
 247名の参加者のうち、リスペリドン:82名、ハロペリドール:81名、プラセボ:84名に割り振られ、Intention-to-Treatで分析を行った。72時間後の時点で、プラセボに対して、リスペリドンが0.48単位(95%信頼区間:0.09-0.86,P=0.02)、ハロペリドールが0.24単位(95%信頼区間:0.06-0.42, P=0.009)、Delirium Symptom Scoreが高かった。プライマリーエンドポイントも多変量のランダム効果モデルを用いた分析で、リスペリドン:β=0.64、ハロペリドール:β=0.70で有意にプラセボの方がよりDelirium Symptom Scoreが改善していた。さらに、錐体外路症状はリスペリドン、ハロペリドールの双方においてプラセボより発生頻度が高く、ハロペリドールについては有意に生存期間がプラセボより悪かった。
【結論】
 緩和ケアを受けている患者においては、リスペリドンやハロペリドールの経口投与を受けた方よりも投与を受けていない方がせん妄の程度も期間も短く、副作用も少なかった。
【コメント】
 リスペリドンやハロペリドールはせん妄症状に対してよく使用されている薬剤であろう。がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2014年)の中でオピオイドの副作用によるせん妄についてではあるが、推奨度2B(弱い推奨)とされ、その他のガイドラインにも記載されており、この結果に驚く医療者も多いのではないか。少なくとも緩和ケアの場面で身体的苦痛に伴うせん妄に対する両剤の使用は見直しを検討する必要がある結果である。

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