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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.75
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2017  75
Journal Club
化学療法誘発性悪心・嘔吐に対するオランザピンの予防効果
山形大学医学部附属病院 薬剤部
志田 敏宏
Navari RM, Qin R, Ruddy KJ, Liu H, Powell SF, Bajaj M, Dietrich L, Biggs D, Lafky JM, Loprinzi CL. Olanzapine for the Prevention of Chemotherapy-Induced Nausea and Vomiting. N Engl J Med. 2016 Jul 14;375(2):134-42.

【目的】
 高度催吐性化学療法を施行した患者の悪心・嘔吐に対するオランザピンの有効性を検討した。
【方法】
 無作為化二重盲検第3相試験で、新規にシスプラチン70mg/m2以上またはシクロホスファミド+ドキソルビシン併用療法を施行し、制吐対策としてデキサメタゾン(12mg;day1, 8mg;day2-4 経口)、NK1アンタゴニスト(day1)、および5HT3アンタゴニスト(day1)を投与している患者を対象とし、オランザピンまたはプラセボを併用した場合の制吐効果を比較した。1日目から4日目にオランザピン10mgまたはプラセボを経口で投与した。
【結果】
 対象患者は380人(オランザピン192人、プラセボ188人)であった。オランザピンおよびプラセボ投与群において、化学療法後に悪心がなかった患者の割合は24時間後(73.8% vs 45.3%、P=0.002)、25?120時間後(42.4%vs 25.4%、P=0.002)および120時間以降(37.3%vs 21.9%、P=0.002)全てにおいて有意に高かった。完全奏効の患者の割合もオランザピンはプラセボと比較して有意に高かった。Grade3以上の副作用として倦怠感、高血糖および血液毒性が認められた。また、オランザピン投与2日目にベースラインと比較して5%の鎮静の増強が認められた。投与継続したが3日目以降は軽快した。
【結論】
 オランザピンは高度催吐性化学療法を施行された患者において、明らかな制吐作用が認められた。本研究では1用量(10mg)のみでの検討であったため、さらに低用量または高用量での検討が必要である。
【コメント】
 がん患者の多くに悪心・嘔吐が生じ、様々な原因が考えられる。オランザピンは多くの受容体に対する拮抗作用を有しており、緩和医療においてはオピオイドによる悪心・嘔吐に対する有効性が報告されている。本論文は化学療法に対する制吐作用を示したものであるが、オランザピンはわが国では吐き気に対しては保険適用外であることに十分注意を要する。日本人に対する用量として、オランザピンは10mgは過量である可能性があり、今後のさらなる研究が望まれる。

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