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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.75
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2017  75
Journal Club
進行期膵臓がんでの早期緩和ケア介入の無作為化比較試験:終末期ケアの比較
名古屋大学大学院医学系研究科
看護学専攻基礎・臨床看護学講座  佐藤 一樹
Maltoni M, Scarpi E, Dall'Agata M, Schiavon S, Biasini C, Codeca C, Broglia CM, Sansoni E, Bortolussi R, Garetto F, Fioretto L, Cattaneo MT, Giacobino A, Luzzani M, Luchena G, Alquati S, Quadrini S, Zagonel V, Cavanna L, Ferrari D, Pedrazzoli P, Frassineti GL, Galiano A, Casadei Gardini A, Monti M, Nanni O; Early Palliative Care Italian Study Group (EPCISG). Systematic versus on-demand early palliative care: A randomised clinical trial assessing quality of care and treatment aggressiveness near the end of life. Eur J Cancer. 2016 Dec;69:110-118. PMID:27821313.

【目的】
 進行膵がんの診断後に専門的な緩和ケア介入を必ず受ける群と必要に応じて受ける群で比較し、早期緩和ケア介入によるQOLや症状の改善を別論文で示した(ニューズレター73号ジャーナルクラブで紹介)。この論文では、副次評価項目である死亡前に受けた医療・ケアを比較した。
【方法】
 イタリアで行われた多施設共同無作為化比較試験で、21施設の外来で進行膵がんと診断されて8週間以内のPS良好な207名を対象とした。早期緩和ケア群100名は緩和ケア外来を2〜4週ごとに受診して系統的な症状・問題評価とケア調整を受け、意思決定支援の内容は腫瘍医とも共有された。通常ケア群107名は必要に応じて専門的な緩和ケア介入を受けた。20カ月経過観察し、149名(80%)が死亡した。評価項目は死亡前の化学療法の頻度と種類、その他の医療、死亡場所、生存期間とした。
【結果】
 ホスピス利用の頻度や期間は早期緩和ケア群の方が有意に多く(早期緩和ケア群1.38±0.64回vs通常ケア群0.97±0.37回,adjusted P=0.001)、長かった(25.2±24.0日vs 14.9±11.1日, adj P=0.025)。死亡前30日以内の化学療法の実施は早期緩和ケア群の方が少なかった(18.7% vs 27.8%, adj P= 0.036)。一方、入院や救急外来利用、死亡場所に有意差はみられなかった。予後は1年生存率(22.4% vs 12.3%, P=0.288)や生存期間の中央値(6.6カ月vs 5.7カ月)で有意差はなかった。
【結論】
 進行期膵がんで、診断後に専門的な緩和ケア介入を必ず受けた患者は必要に応じて受けた患者より有意にホスピス利用は多く死亡前の化学療法は少く、その他の終末期ケアでも有意ではないが違いがみられた。早期緩和ケア介入により終末期ケアの質が改善される可能性が示された。
【コメント】
 進行期の肺がんや消化器がんを対象に行われたTemelらによる早期緩和ケア介入試験と同様に、進行がんと診断されたら必ず専門的緩和ケアを併診するという介入プロトコールである。生存期間の違いは1カ月に過ぎないが早期緩和ケア群の方が長期生存であるのは他研究とも一貫した結果である。なお、1カ月の違いは進行期膵がんの生存期間の中央値6カ月に対して15%程の延長であり、QOL評価でなく生存期間を主要評価項目としてサンプルサイズ設計をすれば統計的に有意な差を示すことも可能であったであろう。生存期間が長いにもかかわらず死亡前ぎりぎりでの抗がん剤投与が少なかったのもTemelらの知見と同様である。Temelらの米国での緩和ケア介入と同じく、このイタリアでの介入でも緩和ケア専門家ががん治療の意思決定支援に携わっていた。特定の症状や問題に対するコンサルテーションとして導入される(日本も多くは同様であろう)のではなく、包括的な緩和ケアプログラムの一環として意思決定支援が位置づけられていることが生存期間延長に寄与した可能性が考えられる。

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